鹿児島&沖縄マングローブ探検

Yaeyamahirugi

八重山漂木

〈ヤエヤマヒルギ〉


日本のヤエヤマヒルギ風景
マングローブ林の海側にかけて生育するヒルギ科の常緑木本であり、沖縄本島以南に分布している。波風にも耐えられるよう支柱根といわれる独特な根を地面に張り、宮古諸島や八重山諸島では海岸や河口付近で群落を形成している。


〔世界分布:主要の地域名称〕
 台湾、東南アジア、オセアニア、東アフリカ
〔利用形態:本種については毒性報告なし〕
 樹皮は染料、果実は民間生薬、木炭原料
日本国内の自生地134カ所
〈分布地域/1県/13島/18市町村〉


GoogleMap

自生地の全体地図

〈地形図と航空写真〉

Overview

基本特性

〈系統と習性を知る〉

\ 木の語源 /


ヒルギ科のなかでも沖縄県八重山地方で多く見られる事から地域シンボルとして和名を「ヤエヤマヒルギ」に選定された。「ヒルギ」の意味については、親木から落ちた胎生種子が水面に漂流する様子から名付けられ、漢字では「漂木」と書く。



\ 学名由来 /


学名は「Rhizophora stylosa」。「Rhizophora」はギリシャ語である「Rhiza/根」と「Phoreo/保持する」の組み合わせに由来する。さらに「stylosa」とはラテン語で花柱が存在するという意味合いをもち学名はこれらの合成語である。



\ 植物分類 /

科名/ヒルギ科:Rhizophoraceae

学名/Rhizophora stylosa

発音/リゾフォラ・ステイローサ

英名/Red Mangrove

別名/慣例ではオオバヒルギ、シロバナヒルギ

保護/環境省と県の絶滅危惧種に未指定


絶滅危惧種の階級図

\ 適応環境 /

気候/年平均気温22℃以上の亜熱帯地方

土壌/軟らかい泥質湿地や砂地を好む

水質/海水~汽水域に適応(耐塩性が高い)

開花/夏季:5月~7月(種子成熟は6月~8月)

繁殖/種子落下→海流散布→土壌定着→成木

植生/マングローブの前面群落(海側)に生育


マングローブでの発達区域図


Exterior

形態的特徴

識別に役立つ

\ 全体構造 /
木の形
ヤエヤマヒルギの樹形図解
樹形/円蓋形(エンガイケイ)
区分/常緑木本(ジョウリョクモクホン)
性質/平均樹高4m-8mとやや高め


根の形
支柱根の図解
形状/支柱根(シチュウコン)が地上に出現
英名/Prop-Root(プロップルート)
性質/呼吸機能、細胞壁で塩分濾過


幹の形
膝根の図解
形状/若木の幹は手で握れるほど細い
樹皮/表面がザラザラ質で赤茶-灰色
性質/樹皮は防腐力あるタンニン含む


\ 器官組織 /
葉の形
長楕円形をした葉の図解
形状/長楕円形の対生で裏に黒点あり
表面/深緑色、光沢質、長さ10㎝前後
性質/葉内で過剰塩分を蓄積して落葉


花の形
ヤエヤマヒルギにある花の図解
外部/三角形の黄色い萼(ガク)が4枚
内部/毛が密生した白い花びらが4枚
性質/雄雌両性花で風により受粉媒介


実の形
胎生種子の図解
果実/黄土・茶色の卵形で長さ約3㎝
種子/棒状の胎生種子(タイセイシュシ)
性質/発芽種子は長さ約20㎝で深緑


ヤエヤマヒルギの支柱根
ヤエヤマヒルギの胎生種子
ヤエヤマヒルギの枝
ヤエヤマヒルギの花

Distribution
地理的分布
〈国内の分布状況〉

\ 国内自生地 /



日本のヤエヤマヒルギは沖縄県の一部離島のみ見られ沖縄本島北部が世界分布の北限である。自生地点は13島133カ所ありヒルギ科の中では南方系のマングローブ樹種であるため宮古・八重山諸島を中心として生育している。





最北端 最南端
沖縄本島
〔大井川*緯度上〕
西表島
〔大原川〕
最北端⇔最南端までの距離/568km
最東端 最西端
沖縄本島
〔慶佐次川〕
与那国島
〔田原川〕
最東端⇔最西端までの距離/491km

\  列島分布図 /

日本全国のヤエヤマヒルギ分布図
鹿児島県 沖縄県
自生地数/0カ所
〔0島0市町村〕
自生地数/134カ所
〔13島18市町村〕


Region
地域別群落
〈土地の景観性〉

\ 沖縄諸島 /

沖縄本島慶佐次川のヤエヤマヒルギ群落屋我地島のヤエヤマヒルギ群落

沖縄本島(22カ所)、屋我地島(2カ所)、宮城島(1カ所)、久米島(2カ所)の合計27カ所に群落があり樹高は3m前後である。天然林としては沖縄本島の東村(慶佐次川)、金武町(億首川)、名護市(久志大川)に限られその他はほぼ植樹で繁殖した。


\ 宮古諸島 /

宮古島大浦湾のヤエヤマヒルギ群落岩礁に根を伸ばす宮古島のヤエヤマヒルギ

宮古島(8カ所)、伊良部島(1カ所)の合計9カ所に群落があり宮古島では島尻バタラズと与那覇湾には樹高4m以上の木々が並び、入江湾では琉球石灰岩の上にも低木が生長する。伊良部島では下地島と隣接する入江干潟(海峡)に群生している。


\ 石垣島×小浜島 /

石垣島のヤエヤマヒルギ群落小浜島のヤエヤマヒルギ群落

石垣島(29カ所)、小浜島(1カ所)の合計30カ所に自生地があり当該地域のマングローブ林では高頻度で出現する。石垣島では川の河口や閉鎖性水域にも群落があるほか、小浜島(石長田海岸)では延長約1kmにわたり波打ち際で生い茂りる。


\ 西表島 /

西表島のヤエヤマヒルギ群落西表島崎山湾のヤエヤマヒルギ群落

西表島((64カ所)に群生しており同島のマングローブでは全地点で生育している。樹高6m以上の高木も多く見受けられ東部地区(仲間崎)には岩礁に根を伸ばす個体や、西部地区(崎山湾)では岬の浸食岩に株立ちする木も確認できる。


\ 由布島×内離島 /

由布島のヤエヤマヒルギ群落内離島のヤエヤマヒルギ群落

由布島(1カ所)、内・外離島(3カ所)の合計4カ所で群生しており砂浜や湿地に密集する。両島は河川が流れていない立地でありながらも比較的に樹勢良好な群落が取り残され、隣接する西表島から流れ着いた漂着種子も発芽している。


\ 与那国島 /

与那国島田原川のヤエヤマヒルギ群落田原川中流寄りのヤエヤマヒルギ群落

与那国島(1カ所)に植樹されたヤエヤマヒルギが定着しており日本最西端のマングローブ林に位置づけられている。自生地は島北部にある田原川下流に位置しており、沖縄県内有数の探鳥地であったが治水工事で大半が伐採された。


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