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Mehirugi
雌漂木
〈メヒルギ〉
マングローブ林ではやや陸側に生育するヒルギ科の常緑木本であり、薩摩半島以南に分布している。盆栽のように樹形が美しく整い、耐寒性に優れているのが特徴で、沖縄本島や奄美大島では板状をした大きな根を張る巨木も生育している。
〔世界分布:主要の地域名称〕
台湾、中国、ベトナム、西インド、ボルネオ島
〔利用形態:本種については毒性報告なし〕
樹皮は染料(以前は大島紬に利用)、木炭
日本国内の自生地/150カ所
〈分布地域/2県/18島/37市町村〉
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GoogleMap
自生地の全体地図
〈地形図と航空写真〉
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Overview
基本特性
〈系統と習性を知る〉
\ 木の語源 /
ヒルギ科の中でも樹形が女性のように清楚である事から「雌」の頭文字をとり「メヒルギ」と和名が決定した。「ヒルギ」の意味については、親木から落ちた胎生種子が水面に漂流する様子から名付けられ、漢字では「漂木」と書く。
\ 学名由来 /
学名は「Kandelia obovata」。「Kandelia」はインド語でメヒルギの呼び名を指す「kandel/カンデル」に由来する。「obovata/オボバタ」については倒卵形の葉を付けるという意味合いがあり学名はこれらの合成語である。
\ 植物分類 /
科名/ヒルギ科:Rhizophoraceae
学名/Kandelia obovata
発音/カンデリア・オボバタ
英名/Yellow Mangrove
別名/リュウキュウコウガイ(琉球笄)、インギー
保護/準絶滅危惧NT(鹿児島県版レッドリスト指定)
\ 適応環境 /
気候/年平均気温18℃以上の温帯-亜熱帯地方
土壌/軟らかい泥質湿地や砂地を好む
水質/海水~汽水域に適応(耐塩性がやや高い)
開花/春季4月~6月(種子成熟は10月~2月)
繁殖/種子落下→海流散布→土壌定着→成木
植生/マングローブの中心群落(陸側)に生育
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Exterior
形態的特徴
〈識別に役立つ〉
\ 全体構造 /
木の形
樹形/杯形(サカズキケイ)
区分/常緑木本(ジョウリョクモクホン)
性質/平均樹高は2m-5mと低め
根の形
形状/板根(バンコン)が地上に出現
英名/Butterss-Root(バットレスルート)
性質/呼吸機能、細胞壁で塩分濾過
幹の形
形状/幹が短く根から枝の距離近い
樹皮/表面が剥がれやすく赤茶-灰色
性質/樹皮は防腐力あるタンニン含む
\ 器官組織 /
葉の形
形状/倒卵形の対生で先端部が丸い
表面/黄緑色、光沢質、長さ6㎝前後
性質/葉内に過剰塩分を蓄積し落葉
花の形
外部/星形した白い萼(がガク)が5枚
内部/細長く白い糸状の花びらが5枚
性質/雄雌両性花で昆虫が受粉媒介
実の形
果実/黄・茶色の長卵形で長さ約2㎝
種子/棒状の胎生種子(タイセイシュシ)
性質/発芽種子は長さ約17㎝で黄緑
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Distribution
地理的分布
〈国内の分布状況〉
\ 列島分布図 /
鹿児島県 | 沖縄県 |
自生地数/39カ所 〔6島13市町村〕 |
自生地数/111カ所 〔12島24市町村〕 |
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Region
地域別群落
〈土地の景観性〉
\ 伊豆×熊本×天草 /
自然分布としては位置づけられないが例外として静岡県南伊豆町(青野川)に1カ所群落が存在する。また熊本県でも宇城市不知火町、八代市、津奈木町、天草諸島の計4カ所で自生地が確認されており、いずれも人為的に植樹された。
\ 薩摩半島 /
鹿児島本土の薩摩半島(13カ所)に群落があり川の下流に生育する。鹿児島市喜入生見町では国指定特別天然記念物リュウキュウコウガイ産地が有名であるが、南さつま市大浦町にも幾つか自生地があり冬は稀に降雪する事もある。
\ 大隅諸島 /
種子島(6カ所)、屋久島(1カ所)の合計7カ所で群落があり川の下流や塩生湿地に発達してる。種子島(湊川)では樹高8mの高木があるほか同島の阿嶽川には土手に繁殖する個体や、大浦川では1m未満の矮性型(わいせいがた)も密集する。
\ 奄美群島 /
奄美大島(14カ所)、加計呂麻島(4カ所)、徳之島(1カ所)の合計19カ所の太平洋側で生育する。奄美大島(住用川)では砂の堆積した河口干潟に群落があるほか徳之島(湾屋川)では一時絶滅したが、近年海岸での植樹により復活した。
\ 沖縄諸島 /
伊是名島(3カ所)、沖縄本島(49カ所)、屋我地島(2カ所)、宮城島(1カ所)、久米島(3カ所)の合計58カ所にあり海岸や川の下流で生育。沖縄諸島では最も分布を広げるマングローブ植物であり久米島(儀間川)では原生林が唯一残る。
\ 宮古×八重山諸島 /
宮古島(7カ所)、伊良部島(1カ所)、石垣島(7カ所)、小浜島(1カ所)、西表島(33カ所)、由布島(1カ所)、内離島(1カ所)の合計51カ所あり群落数は減少する。これは寒さに強いメヒルギが南方では勢力を弱める傾向にある理由からである。
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