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Hirugidamashi
漂木騙
〈ヒルギダマシ〉
マングローブ林の海側にかけて生育するキツネノマゴ科の常緑低木であり、沖縄本島以南に分布している。地面から割り箸を立てたような筍根が現れ、吸収した塩分を葉から蒸散させる特徴があり、宮古島北部では樹高が高い個体も見られる。
〔世界分布:主要の地域名称〕
東アフリカ、インド、東南アジア、オセアニア
〔利用形態:種子は食用としての毒性報告あり〕
果実は家畜飼料、葉と樹皮は生薬、木炭の原料
日本国内の自生地/49カ所
〈分布地域/1県/9島/18市町村〉
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GoogleMap
自生地の全体地図
〈地形図と航空写真〉
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Overview
基本特性
〈系統や習性を知る〉
\ 木の語源 /
ヒルギ科に属さないが、「ヒルギ」と同じく塩分に耐えられる特性から近縁の意を込めて「ダマシ」が後付けされた。マングローブ林のヒルギ類と共存していることを明示させるため和名の先頭にはヒルギの単語が象徴されている。
\ 学名由来 /
学名は「Avicennia marina」。「Avicennia」は10世紀初頭に中東イランの医師「Avicenna/アビセンナ」に敬意を表したことに由来する。「marina」は木が海中に浸かる様子を意味するもので学名はこれらの合成語で誕生した。
\ 植物分類 /
科名/キツネノマゴ科:Acanthaceae
学名/Avicennia marina
発音/アビセニア・マリーナ
英名/Grey Mangrove
別名/カネプシ(西表島の方言に限る)
保護/絶滅危惧ⅠB類EN(環境省版レッドリスト指定)
\ 適応環境 /
気候/年平均気温22℃以上の亜熱帯地方
土壌/軟らかい砂地や泥質湿地を好む
水質/海水~汽水域に適応(耐塩性が非常に高い)
開花/夏季:5月~7月(果実成熟は9月~11月)
繁殖/種子落下→海流散布→発芽開始→成木
植生/マングローブの前面群落(海側)に生育
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Exterior
形態的特徴
〈識別に役立つ〉
\ 全体構造 /
木の形
樹形/伏生形(フクセイケイ)
区分/常緑低木(ジョウリョクテイボク)
性質/平均樹高50㎝-2mと低い
根の形
形状/筍根(ジュンコン)が地上に現れる
英名/Pencil-Root(ペンシルルート)
性質/呼吸機能、細胞組織で塩分濾過
幹の形
形状/幹はあまり伸びず枝が直ぐ展開
樹皮/表面が淡いグレーでシワが寄る
性質/樹皮は防腐力あるタンニン含む
\ 器官組織 /
葉の形
形状/楕円形の対生で葉脈が目立つ
表面/黄緑色、光沢質、長さ3㎝前後
性質/塩類腺で塩分を蒸散し結晶化
花の形
外部/約5㎜の橙・黄色の花びらが4枚
内部/約1㎜の粒状化した雄しべが4つ
性質/雄雌両性花で鳥や虫が受粉媒介
実の形
果実/黄緑の平らな豆形で長さ約2㎝
種子/果実にある深緑の層に包まれる
性質/果実は毛が密生し発芽力が高い
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Distribution
地理的分布
〈国内の分布状況〉
\ 列島分布図 /
鹿児島県 | 沖縄県 |
自生地数/0カ所 〔0島0市町村〕 |
自生地数/49カ所 〔9島9市町村〕 |
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Region
地域別群落
〈土地の景観性〉
\ 沖縄諸島 /
沖縄本島(5カ所)、屋我地島(2カ所)に個体が生育しており移植により繁殖した。一方で、沖縄本島国頭村(奥川)で1本残存するヒルギダマシは地域住民の聞き取り調査でも植樹記録がなく、漂着個体の可能性が高いと推測される。
\ 宮古諸島 /
宮古島(5カ所)、伊良部島(1カ所)に生育しており自然分布の北限では宮古島(島尻バタラズ)に位置づけられる。同島では与那覇湾や入江湾のほか伊良部島にも低木が生い茂り、島尻バタラズでは樹高4mの中木も自生している。
\ 石垣島×小浜島 /
石垣島(8カ所)、小浜島(1カ所)で見られ石垣島では川平湾浜辺と名蔵アンパルに個体が集中している。マングローブ林を背にするように海岸最前部で生い茂るほか小浜島(石長田海岸)では潮が満ちると木の上部まで海水に被る。
\ 西表島×内離島 /
西表島(23カ所)、由布島(1カ所)、内離島(1カ所)にあり海岸干潟で生育している。西表島東部の仲間崎から古見の海岸線にある岩礁地帯で群落が形成されており、内離島ではマングローブ林の内陸寄りまで個体が定着している。
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