海水に浸かる不思議な木




塩分で変わる植生
\ 木の特徴 /
日本には5科7種のマングローブ植物があり鹿児島県と沖縄県に自然分布する。これらの植物は塩分に強い常緑樹という共通の特徴を持ち、樹高が50cm~10m以上まで幅広い。平均寿命は約50年とされ樹齢100年~350年の古木も存在する。

\ 生育環境 /
熱帯・亜熱帯沿岸の海水と淡水が混ざる汽水域(すいいき)を好むため、海岸や川の下流など潮の干満影響を受ける場所に現れる。泥や砂地など柔らかい土壌に根づき、個体が長期的に繁殖していくとマングローブ林としての森林が形成される。

\ 植生構造 /
マングローブ林を全体図で見ると「前面群落→中心群落→後背群落」の順番に海側から陸側まで3つのエリアに分かれ、潮の冠水頻度や塩分濃度の違いで木の棲み分けが明確化する。内陸からは「半マングローブ植物」という仲間の植生に移り変わる。

進化した器官構造








4種類の独特な根








構成植物の一覧
\ 検索早見表 /
地域区分
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構成樹種 | 自生地数 |
鹿児島
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1科1種
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13カ所
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種子島
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1科1種
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6カ所
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屋久島
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1科1種
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1カ所
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奄美大島
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1科2種
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14カ所
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加計呂麻島
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1科2種
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4カ所
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徳之島
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1科1種
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1カ所
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伊是名島
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1科2種
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3カ所
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沖縄本島
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3科5種
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51カ所
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屋我地島
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2科4種
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2カ所
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宮城島
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1科3種
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1カ所
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久米島
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1科3種
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3カ所
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南大東島
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1科1種
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4カ所
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宮古島
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2科4種
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8カ所
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伊良部島
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2科4種
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1カ所
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石垣島
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4科6種
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32カ所
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小浜島
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3科5種
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1カ所
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西表島
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5科7種
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64カ所
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由布島
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4科6種
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1カ所
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内・外離島
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4科6種
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3カ所
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与那国島
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1科1種
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1カ所
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\ 日本全体の分布 /
鹿児島県から沖縄県に南下していくと気温の高さと比例してマングローブ樹種が増え、最北端の「鹿児島」と最南端の「西表島」では年間の平均気温差が約7℃もある。5科7種が同じ地点で確認できるのは西表島(大原川)のみに限られる。

GoogleMap〔日本全土版〕
全種生育地
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最多占有種
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自生地総数
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西表島/大原川
〔5科7種〕
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オヒルギ
〔15島156カ所〕
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20島214カ所
〔2県37市町村〕
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\ オヒルギ /
ヒルギ科に属する常緑高木であり奄美大島以南の15島156カ所に分布する。幹の表面にあるデコボコノの皮目とオクラのような胎生種子が特徴的で、陸側のマングローブでは樹高10m以上になることもあり木の周囲では波状の膝根が発達する。

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\ メヒルギ /
ヒルギ科に属する常緑木本であり鹿児島以南の18島150カ所に分布する。盆栽のように整った樹形と丸みを帯びた葉を持ち、小さな板根を発達させるほか胎生種子も実らせる。寒さに対して比較的強く天草諸島や伊豆半島でも植栽されている。

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\ ヤエヤマヒルギ /
ヒルギ科に属する常緑高木で沖縄本島以南の13島134カ所に分布する。マングローブ特有の風格が現れている代表的な樹種であり、支柱根を四方八方に発達させる。葉の先端が尖っておりアスパラガスに似た細長い胎生種子が見受けられる。

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\ マヤプシキ /
ハマザクロ科に属する常緑高木であり石垣島以南の4島22カ所に分布する。ブラシ状の純白な花を咲かせ成熟すると渋柿に似た果実を実らせる。多肉質の葉を持つほか細いタケノコの形をした筍根が地中から針山のように突き出す特徴もある。

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\ ヒルギダマシ /
キツネノマゴ科に属する常緑低木であり沖縄本島以南の9島49カ所に分布する。海岸の最前線で波しぶきを受けながらも高い塩分濃度に耐えて生きる低木である。満潮時には木全体が水に浸かり、地上には割り箸ほどの小さな筍根が発達する。

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\ ヒルギモドキ /
シクンシ科に属する常緑木本であり沖縄本島以南の5島21カ所に分布する。マングローブ後背群落にある砂地での生育が一般的であり、稀に匍匐根(ほうふくこん)を発達させる。葉は多肉質で水分を多く保持し、小判のような形をしている。

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\ ニッパヤシ /
ヤシ科に属する常緑低木であり西表島以南の2島3カ所に分布する。日本では限られた地点でしか自生していない幻のヤシ。泥質湿地に生えており地中からは幹のような太い葉柄(ようへい)を形成しつつ、羽状の葉を広げる特性を持っている。

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