鹿児島&沖縄マングローブ探検

Overview

南国の水辺に現れる森

〈水陸両生の世界〉

西表島のマングローブ林風景
基本特性
マングローブとは沿岸にある森林地帯の総称であり、日本ではヒルギ科をはじめとする7種類の塩生植物が生育!
海水に浸かるオヒルギの木
成立条件
熱帯・亜熱帯地方の淡水と海水が混ざる水域を好み、軟弱土壌であるという3つの環境条件を満たした場所に定着!
海岸で発達する低木マングローブ林
発達形状
海岸・河川・入り江・湿地帯などで形成されるマングローブ林は、4つの多種多様な森林景観を持ち合わせている!
上空から眺めたマングローブ林風景
分布規模
日本のマングローブは世界分布の北限に位置づけられており、鹿児島県と沖縄県の一部離島だけしか存在しない!

Distinction

木の名前ではない

〈特徴と見分け方〉

\ 起源と歴史 /


約1億年前にマングローブ植物が出現したと考えられており、日本では約1600万年前の地層からこれらの花粉化石が発見されている。陸上の生存競争に直面しながらも厳しい沿岸環境に適応して進出したため、特別な生理的機能を持っている。



\ 語源の由来 /


東南アジアのマレー語で海岸樹木を表す「mangi-mangi」に、英語で小さな森を意味する「grove」を合わせマングローブ(Mangrove)の単語が誕生したとされている。漢字では「海漂林/かいひょうりん」、「紅樹林/こうじゅりん」とも表記する。



\ 森林形態 /


マングローブとは海水が浸入する限られた森林地帯の総称で、耐塩性のある常緑小高木・ヤシ・ツル・シダ類が密生する。木が1種類しかない自生地では、例えば「オヒルギ群落」のように植物名の末尾に「群落」や「林」を付加して植生を強調させる。




マングローブ林の鳥瞰図



\ 主要植物 /


日本のマングローブ林を構成するのは5科7種に限られ、ヒルギ科はどこの自生地でも必ず1種生育する。これらは陸上植物と異なる特殊な根や海流散布できる種子を持つほか、樹形が似ているガジュマルやタコノキは他種として分類されている。



科名
木の名前
北限地
ヒルギ科
鹿児島
奄美大島
沖縄本島
キツネノマゴ科
シクンシ科
ハマザクロ科
石垣島
ヤシ科
西表島



Environment

適した気候と環境

〈成立する立地条件〉

\ 高温多湿を好む /

日本最大級の仲間川マングローブ林 マングローブ適応気温についての説明図

熱帯・亜熱帯地方に分布するため適応気温は15℃~35℃、湿度は70%以上が理想的である。寒さに弱いため5℃以下の日が続くと木が急激に枯れやすくなるが、鹿児島のマングローブ北限地では2日間の降雪にも生き耐えた記録がある。


\ 低地に出現する /

根まで水没したマングローブ林 マングローブ標高地形についての説明図

マングローブ林は冠水頻度の高い沿岸域で発達するため、標高がわずかに高くなる陸地近くで急激に分布が途絶える。生育区域の範囲として海抜0mの海側と陸側の高低差は約2mほどで、これは海水が満ちる際の最大水位と相関する。


\ 水質環境も選ぶ /

水中で撮影したヒルギダマシ マングローブ水質環境についての説明図

潮の干満影響を受けるマングローブは、海水と淡水が混ざる「汽水域/きすいいき」と呼ばれる水質で、塩分濃度は約0.5%~3%の範囲。このような水域は川の上流と比べて水温が高く流れも緩やかで、木が繁殖するのに有利な条件となる。


\ 土壌が軟らかい /

泥沼で生い茂るオヒルギ マングローブ土壌性質についての説明図

生育樹木は泥や砂地など軟弱な土壌に生えるが砂利や岩場でも稀に定着する。24時間に2回発生する水没現象により地中では常に多くの水分が保たれており、地面が乾燥しづらいため実際にマングローブを歩くと足跡には濁水が溜まる。



Structure

4種類の発達形状

〈森林構造と地形〉

\ 海岸型 /

海岸の波打ち際にあるマングローブ林 海岸型マングローブ林の地形図

遠浅の湾内・入り江・岬などで見られる海岸型のマングローブ林「英名:Fringe-forest/フリンジフォレスト」は、波の影響を強く受ける環境に位置しているため、樹高が低くなる傾向がある。西表島と宮古島では岩礁に根を張る木もある。


\ 河川型 /

下流両岸に広がるマングローブ林 河川型マングローブ林の地形図

川の河口から中流へと帯状に広がる河川型のマングローブ林「英名:Riverine-forest/リバーラインフォレスト」は、最も典型的な形状で自生地の大半はこれに該当する。種子島(阿嶽川)では土砂が堆積した河川の土手にも木が密集している。


\ 湿地型 /

内陸地まで生い茂るマングローブ林 湿地型マングローブ林の地形図

海と川から離れた後背地にある湿地型のマングローブ林「英名:Basin-forest/ベーシンフォレスト」は、普段は水の出入りが少ない閉鎖性水域にあるが大潮の日は冠水する。宮古島では地下水が湧き出る入り江や沼地でも自生地がある。


\ 陸封型 /

南大東島大池にあるマングローブ林 陸封型マングローブ林の地形図

外洋から切り離された立地に成立する陸封型(りくふう)のマングローブ林「英名:Landlock-forest/ランドロックフォレスト」は、サンゴ礁の隆起で低地に取り残された水域の淵にある。日本では南大東島(大池)のみにある稀な光景である。



Distribution
国内の分布規模
〈統計別のデータ〉

\ 検索早見表 /


地域区分
分布面積 自生地数
鹿児島
0.714㌶
13カ所
種子島
29.752㌶
6カ所
屋久島
0.021㌶
1カ所
奄美大島
33.825㌶
14カ所
加計呂麻島
0.406㌶
4カ所
徳之島
3.558㌶
1カ所
伊是名島
0.159㌶
3カ所
沖縄本島
59.585㌶
51カ所
屋我地島
6.840㌶
2カ所
宮城島
0.056㌶
1カ所
久米島
0.545㌶
3カ所
南大東島
11.501㌶
4カ所
宮古島
12.731㌶
8カ所
伊良部島
4.106㌶
1カ所
石垣島
101.824㌶
32カ所
小浜島
8.929㌶
1カ所
西表島
602.099㌶
64カ所
由布島
1.776㌶
1カ所
内・外離島
3.365㌶
3カ所
与那国島
0.178㌶
1カ所


\ 日本全体の状況 /


世界のマングローブ面積と比較すると国内分布はわずか0.006%。自生地は計20島214カ所(鹿児島県6島39カ所、沖縄県14島175カ所)あり太平洋側では最も北限となる。一方でトカラ列島・慶良間諸島・小笠原諸島には全く分布しない。





日本全体のマングローブ分布図



GoogleMap〔日本全土版〕


自生地数
国内総面積
換算比率
20島214カ所
〔2県37市町村〕
882.514㌶
〔2024年時点〕
約190個分
〔東京ドーム〕

\ 東西南北の位置 /


国内では南西諸島を連なるようにマングローブが分布しており、最北端の鹿児島(神之川)から最南端の西表島(大原川)までの距離差は1032㎞。最東端の南大東島(大池)から、最西端の与那国島(田原川)までの距離差は844㎞である。



方位区分
地域名称
自生場所
国内最北端
鹿児島
国内最南端
西表島
国内最東端
南大東島
国内最西端
与那国島


\ 北限場所の基準 /


自然分布の北限として記録上は鹿児島県日置市(神之川)だが、一般的には種子島西之表市(湊川)となり寒さに強いメヒルギが1種生育。さらに種子島から北に846㎞離れた静岡県南伊豆町(青野川)では試験植栽されたメヒルギも定着する。



限界区分
地域名称
自生場所
人工定着
南伊豆町
自然定着
日置市
自生群落
南さつま市
天然群落
西之表市


\ 鹿児島県の統計 /


鹿児島本土の薩摩半島から種子島・屋久島の順に続き、県内のマングローブ最南端は奄美群島(徳之島)で分布範囲は約400㎞に及ぶ。高緯度のため大半の樹種はメヒルギ1種に限られるが、奄美大島以南からオヒルギも加わり1科2種となる。



自生地数
分布面積
換算比率
県内39カ所
〔6島11市町村〕
68.603㌶
〔国内比率8%〕
14個分
〔東京ドーム〕
木の種類
最北限地
最大群落
1科2種
〔県内合計〕
〔鹿児島〕
〔奄美大島〕


\ 沖縄県の統計 /


沖縄本島北部から大東・宮古・八重山諸島に分布し、県内のマングローブ最南端は八重山諸島(西表島)で分布範囲は約500㎞に及ぶ。西表島ではヤエヤマヒルギ・マヤプシキ・ヒルギダマシ・ヒルギモドキ・ニッパヤシを含む5科7種が生育する。



自生地数
分布面積
換算比率
県内175カ所
〔14島26市町村〕
813.911㌶
〔国内比率92%〕
174個分
〔東京ドーム〕
木の種類
最北限地
最大群落
5科7種
〔県内合計〕
〔伊是名島〕
〔西表島〕


\ 地域別面積ベスト5 /


島別では沖縄県にある西表島が自生地数と分布面積ともに圧倒的な1位を誇り、石垣島と沖縄本島がそれに続く。鹿児島県の奄美大島と種子島では大規模なマングローブが数カ所あるため島単位における分布面積では上位を占めている。



上位順番
面積規模
国内比率
西表島
602.099㌶
68.3%
石垣島
101.824㌶
11.5%
沖縄本島
60.130㌶
6.8%
奄美大島
33.825㌶
3.8%
種子島
29.752㌶
3.3%


\ 地点別面積ベスト5 /


日本最大級のマングローブは西表島の5カ所に集中しており国有林や自然保護区等に指定されている。5カ所の群生面積を統計すると国内分布の半分近くに値する「約44%」も占め、仲間川や浦内川では群生距離が5㎞以上も続いている。



上位順番
面積規模
国内比率
仲間川
124.252㌶
14.0%
浦内川
103.124㌶
11.9%
ナカラ川
63.007㌶
7.1%
船浦湾
58.127㌶
6.5%
クイラ川
46.836㌶
5.2%


マングローバルのロゴマーク

© ManGlobal All rights reserved.